2005年の十枚

最近、聴く傾向として、辛口系より甘口系が好きになってきた。攻撃的なものより、内省的なのもに惹かれる。もっともオーティス・レディングだって相当ぐじぐじした曲作っていたもんね。
揺れ幅が広がったってことにしておきましょう。
1 アントニー&ザ・ジョンソンズ「アイ・アム・ア・バード・ナウ」
ANTONY AND THE JOHNSONS [I AM A BIRD NOW] `05
泣けた。あまりにも美しい。
深い悲しみと痛みを知り尽くした音楽。切な過ぎるがどこか救いがある。エロティックだが修行僧のよう。テリー・キャリアーをメチャクチャ色っぽくした感じ。大人の音楽。単純な単語だらけのせいか歌詞がついてないが、僕には英語の読解力がなくて歯がゆい。ちゃんと正確な意味がわかったらもっと泣けそう。
2 リチャード・ボナ「ティキ」
RICHARD BONA[TIKI] `05
昨年は殆どのリチャード・ボナ(個人名儀の)の作品をひたすら聴いていた。どれもが素晴らしい。「ムニア/ザ・テイル」が一番好きだが、この最新アルバムも大好き。何たって声がいい。心に染みわたる。もちろんベースもカッコいい。ただ、ジャケットデザインがいつも今一ださいんだよなー。
3 ジョアンナ・ニューサム「ミルク・アイド・メンダー」
SOANNA NEWSOM [THE MILK-EYED MENDER] `04
最近ヴァシュティ・バニアンやエミリアナ・トリッニーなどのフリ−フォ−ク系の女性シンガー・ソング・ライター達のアルバムで良質の物が多いが、その中でジョアンナ・ニューサムが一番面白い。何とハープ(竪琴の方。ブルースハープではない)の弾き語りの人。それを音響的に処理した宅録ぽっいアルバム。といっても、ノスタルジーあふれる童謡のようなやわらかい音。とってもピュアーなアルバムです。
4 コノノNo1「コンゴトロニクス」
KONONO No1 [CONGOTRONICS] `05
以前「Ho!」というベトナムの路上で録音したチープでノイズだらけなアルバムがあった。あれはあれでPOPだったが、こちらはもはや芸術的ですらある。負けずにチープでノイジーだけどね。コンゴでの親指ピアノ「ンビラ」を電気で増幅させ歪ませた音楽。まるでエレキを使ったライトニン・ホプキンスのような汚い音。
電気を通す必要のない楽器を無理矢理アンプリファイさせひずませる行為は空間をゆがませる事と同じくらい強烈な事だ。その覚悟がこのアルバムにはある。お膳立てされたアタッチメントで音を歪ませて悦に入っているロックギターリストに聴かせたい一枚。
5 アルセニオ・ロドリゲス「キンテンポ」
ARSENIO RODRIGUEZ [QUINDEMBO] `05(録音`65)
この盲目のトレス奏者を初めて知ったのは、ブルーノートの「SABU」というアルバムだった。すげー声だと思った。その後この人はもっとすげーキューバのバンドのリーダーだと知った。でも歌は唄ってなかった(そりゃー、ミゲリート・クニーというすげー歌手がいたからなー)その後「プリミティボ」などちらっと唄ってるアルバムも見つけたが、やっと目一杯唄っているアルバムに出会った。音がDEEP。トレスも半端じゃない。
6 デヴェインドラ・バンハート「クリップル・クロー
DEVENDRA BANHART [CRIPPLE CROW] `05
巷で騒がれているので、そんなに言うなら(誰がだ?)聴いてみてやってもいいかと高飛車で聴いてみたが、これがスゴイ!-って訳でもなく、最初はフーンそんなもんかという位だった。ただ、聴き続けていくうちにちょっとずつボディブロー的な効果を発揮する不思議なアルバム。時間軸空間軸をあらよっと飛び越えられる
ピーター・パンのような人。
7 半野喜弘「アンジェラス」
HANNO YOSHIHIRO [ANGELUS] `05
前作「リド」も愛聴していたが、彼がこれ程のボーカルアルバムをつくるとは(もっと彼自身は一曲も唄ってはいない)シルクのようになめらか、でも毒も痛みもある良質な音楽。ハナレグミで泣けるかホソノハルオミで泣けるかが、世代の分かれ目になるでしょうな。
8 ハミロ・ムソット「スダカ」
RAMIRO MUSOTTO [SUDAKA AN VIVO] `05
ビリンバウ奏者ではナナ・ヴァスコンセロスという怪物がいるが、ハミロ・ムソットは現役で活躍してるブラジル・パーカショニスト。伝統を踏まえながらものすごく未来的。ライブでこんなコラージュ音楽できるなんて。マルコス・スザーノといいブラジルは独特の音作りをするパーカッションが多い。日本だと加藤泰一くらいか?
9 マデリン・ペルー「ケアレス・ラヴ」
MADELEINE/PEYROUX [CARELESS LOVE] `05
ジャズ系からは情調に流せれ過ぎと、ノスタルジーミュジック系からは真面目過ぎると言われそうなどっちつかずのアルバム。そこがいい。アメリカでもロングセラー中だという。ノラ・ジョーンズ以降、ていうか9.11以降この手のしっとり系ジャズが、アメリカ人好きね。僕もすっかりなごませてもらいました。
10 マグネット「ザ・ターニケット」
MAGUNET [THE TOURNIQUET] `05
北欧のフォークトロニカには「Tape」とか面白いものが多いが、この人はシンガー・ソングライター・ラップスティールギタリスト、電子音楽家。「ザ・ターニケット」とは「止血帯」という意味らしいが、音もちょっと痛い。でも、痛みがかゆみに変わるような、治療を受けるるような心地よさがある。
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