2004年の十枚

知り合いに聞いた話しだが、最近の大学って昔みたいなロックサークルって殆どないんだってね。皆ロックなんかやらずに(HIP-HOP)ダンスあたりのサークルに行っちゃうらしい。今やロック=オールディーズって認識なんだろう。ちょっと古臭いと言うか、型にはまってるって言うか。ロックで育った俺としてはショックだが、成る程なーとも思う。俺自身それにリンクするようにロック聴かなくなったし、面白い音楽はロックだけじゃないという事を知ってしまったからだ。
1 セウ・ジョルジ「クルー」
SEU JORGE [CRU] `04
ロックでなくてもロック的衝動を感じさせる刺激的な音楽は世に沢山存在する。その共通項はストリート感だ。このアルバムは隅々までブラジルの街の匂いがプンプン漂う。それも正にたった今のブラジル。昔のポルテーラのじいさん達の街の匂いとは(同じ曲やっても)明らかに時代が違う。
2 ブランドン・ロス「コスチューム」
BRANDON ROSS[COSTUM] `04
キップ・ハンラハンの秘蔵子、というより、まんまカサンドラ・ウイルソンじゃんと突っ込みたくなる位、最近の音響的アコギのサウンド世界の元をつくった人物。ただ、巷で流行ってる頭でっかちで雰囲気だけの音ではなく、相当変態。で、メチャクチャ色っぽい。
3 ヘマ・イ・パベル「アート・ベンベ」
GEMA Y PAVEL [ART BEMBE] `03
「アート・ベンベ」!この2枚組を何度聴いた事か!オシャレでいて革新的。でもしっかり伝統を受け継いでいる、最先端のキューバ音楽。ブラジル勢もうかうかしていると先越されまっせー。ただ、苦言を一つ。ジューサもそうだが、声が弱い。昔のキューバの連中の声はそれはそれは凄かったぞ。
4 レモン・ジェリー「ロスト・ホリゾンズ」
LEMON JELLY [LOST HORIZONS] `03
素晴らしい!こういうオモチャ箱ひっくり返したような音楽大好き!良質なポップス。未来的な、それでいて牧歌的な音。子供でも楽しめる遊園地のような音。でもディズニー・ランドみたいなPTA御推薦の音ではなく、下世話で、意地悪で、色んな毒がちりばめられている。
5 カーラ・ブルーニ「風のうわさ」
CARLA BRUNI [QUELQU`UN M`A DIT] `04
歌詞を読んだり、歌いっぷりを聴くと、もーちっと苦労せんかい!と後頭部を引っ叩きたくなる程の鼻持ちならないお嬢さん。お城で生まれ、本業が世界的なモデルなんだからしょうがない。ただ、音のザラつきにストリート感がある。セウ・ジョルジなんかと環境は正反対なのに音に共通項がある。うーん、何でだろ。削ぎ落とした音造りって事だけじゃない気がする。
6 ベベウ・ジルベルト「ベベウ・ジルベルト」
BEBEL GILBERTO [BEBEL GILBERTO] `04
ファーストも素敵だったが、このアルバムもとろけそうになる。カエターノ・ベローゾやジュアン・ジルベルト達の蒔いた種は、今方々で花が咲き誇っているが、その中でこのアルバムはひと際鮮やかに咲いた、芳醇な香りを放つ、一輪の花だ。
7 マーヴィン・ポンティアックの伝説」
[THE LEGENDARY MARVIN PONTIAC GREATEST HITS] `01
01年にジョン・ルーリー周辺が出した名(迷)盤。あー、発売された当時に聴いときゃよかった、って感じ。正にNYのジャム・シーンが一番油の乗っていた頃の音。やりたい事と、やるべき事と、やれる事がしっかり合致していた時の音。9.11以降どうもNYは(アメリカは)その三つがチグハグになってきてしまった。
8 ハナレグミ「日々のあわ」 `04
今回のMY BESTにはガツンとした奴がないなー。何かホンワカ系が多いかも。年のせいか?肉より魚がいい、みたいな。ハナレグミもそう。ただアメリカン・ミュージック的メロディにこれ程自然に日本語を乗せられるのは凄い。昔じゃありえなかった。やっぱJ-HIP-HOP全盛世代の音。ここでも鈴木惣一朗さんの仕事が光る。イノトモにしても高田蓮にしてもワールドスタンダード鈴木の音作りは大好き。
9 アーサー・ラッセル「アーサー・ラッセルの世界」
ARTHUR RUSSELL [THE WORLD OF ARTHUR RUSSELL] `04
前々から気になった伝説の人物(92年天折)のベストアルバムが出たので手に入れた。いやー、何だかすごいねー。POPで、アバンギャルドで、チープでおちゃめで、思慮深い。もう、ゴッタ煮状態。何やりたいかさっぱりわからん(何かキップ・ハンラハンに似てる)。こういうジャンルがカテゴリーとして確立する直前の混沌とした音って、たまらなく魅力的。
10 アニマル・コレクディヴ「サング・タングス」
ANIMAL COLLECTIVE [SUNG TONGS] `04
今回選んだ唯一のロック。と言ってもアシッド・フォーク(って、いいんですけどね、ジャンルなんか)。アコギが全面に出た音楽だけど、こんなの今までなかった。シンガーソングライター系は全く受け継いでないし、ジャック・ジョンソンあたりのサーフ系とも無縁だ。グランジ以降の今のアメリカの若造の音楽だが、この肌触り、強引に言うとカントリー・ブルースのジャグ・バンドやキューバの大昔のトリオ・マタモロスなんかに似ている。
次点 リオ・シドラン「ボヘミアン」
LEO SIDRAN [BOHEMIAN] `04
えーい、アコギ絡みでもう一点。これまた無国籍で、形容しがたい音楽。ちゃんとPOPなんだがどこかひねくれている。
 
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