2002年の十枚

実は、昨年一番よく聴いたのはトム・ウェッツの2枚の新譜だったのだが、あの鋼鉄の様に構築された音世界はあまりにも揺るぎなく、俺が音楽を聴く上で一番大事な「今まで聞いた事の無い音を聴きたい」という欲望を満たしてはくれなかったので、省いた。
また、いつも何かしでかしてくれていた、ミッシェル・ウンデゲウチェロ、カサンドラ・ウイルソン、ジョン・スペ、ロス・ロボス、ベック、フレーミング・リップス等の新譜が今一ピンとこなかった。楽しみにしてただけに残念。
1 レニーニ「ファラジン・カニバル」
LENINE [FALANGE CANIBAL] `02
現在最も俺にリンクしている男。ただ彼はとんでもない勢いで進化しているのでこっちも追い付くのに必死。
2 トリッキー「ブローバック」
TRICKY [BLOWBACK] `01
トリッキーはブルースだ。ブルースとは暗く、重く、歪んだ音の塊だ。その巨大な塊が高度の熱を帯びうごめく。そこが他の民族音楽と徹底的に違う。パンクが一番近い。トリッキーはもっと近い。
3 ローリン・ヒル「MTVアンプラグド
LAURYN HILL [MTV UNPLUGGED] `02
世界中がたまげたが、俺もたまげた。これ以上削ぎ落とすものは無い位の究極のシンプルな音造りに、はっきり孤が見え、それ故ノンジャンル、ボーダレスという言葉を使うのがばかばかしくなる程、強烈な個が見えた。しかしなーこれじゃ売れんだろうに。
4 バッファロー・ドゥター「アイ」
BUFFALO DOUGHTER [I] `01
俺のあこがれのバンド。こういうバンドの活動のおかげで、近い将来には性別で音楽を評価する必要が無くなるだろう。
5 マイルス・デイビス-リミックス「パンサラッサ」
MILES DAVIS-REMIX BILL LASWELL [PANTHALASSA] `88
遅ばせながらこの名盤を。俺ビル・ラズウェル嫌いなんだけどな。俺の気になるシーンに必ず先に首を突っ込んでいる。その嗅覚、坂本龍一に似ている。
6 キップ・ハンラハン「コウプ・デ・ティティ」
KIP HANRAHAN [COUP DE TETE] `81
こいつは俺だ。俺がやりたい事を20年前からやっている。まいっちゃうなー。このNYの香りプンプン匂い立つ音には、腰砕けになりそう。
7 ファナ・モリーナ「トレス・コーサス」
JUANA MOLINA [TRES COSAS] `02
いやー驚いた。アルゼンチンにこんなとんがった音を造る奴らがいたなんて。シカゴ音響派も真っ青って感じ。このシーン要チェック。誰かこのアルバムの歌詞訳して。
8 エイヴェインド・オールセット 「ライト・エクストラクツ」
EIVIND AARSET [LIGHT EXTRACTS] `01
今年は俺的にはアメリカン・クラーベとジャズランドの年だった。ハービー・ハンコックの「FUTRE 2 FUTURE 」やDJロジックに何の感動もなかった俺は、どんどん黒人体質GLOOVE から懸け離れていく気がする。
9 トニー・グェレロ&ガジェット「ホイ・エン・アッシン」
TOMMY GUERRERO&GADGET [HOY YEN ASSIN] `00
昨年のマイベスト10にも入れてた彼は、今もっともシンパシーを感じる。何の音楽的スキルがなくともかっこいい音楽はりっぱにできることを証明してくれてる。
10 アーサラ・ラッカー「スーパー・シスタ」
URSULA RUCKER [SUPA SISTA] `01
時代としっかり向き合い、自分の土地に凛として立っている女性が好きだ。ニーナ・シモン、ミッシェル・ウンデゲウチェロ、マイーザ・モンチ、アスター・アウェケ、アニー・デフランコ、ビョーク、ショーロ・アズーの林夕紀子。4HERO出身の彼女も同じ地平線に立っている。
次点 ガロート GAROTO
今年2番目によく聴いたCD-R(パンデイロの加藤君に録音してもらった)。サンバもボサノバも生まれる前の40年代のブラジルの伝説のギタリスト。まるでジャンゴ・ラインハルトみたい。えも言われぬふくよかな音楽。